JRR-3鳥瞰図
2.本体施設の概要と主要諸元
JRR-3は我が国の原子力技術の開発と向上を目的として昭和34年に建設が開始され、昭和37年9月に臨界に達しました。その後、特性試験を経て昭和41 年から本格的な共同利用に供されてきた。JRR-3の熱中性子束(最高3×10
17n/m
2・sec)
などが研究の進展に伴う利用の要望に対応出来なくなったのを機に、研究炉長期整備計画検討委員会の検討を経て昭和54年から改造計画がスタートしました。
改造では既存の原子炉建家は手直し補修した上で再利用することとし、JRR-3原子炉建家内全ての設備、機器等を撤去しました。
また、運転のための原子炉制御棟、中性子導管によって原子炉建家外に導いたビームによる実験を行う実験利用棟、2次冷却塔等は新しい建家として増設されました。
原子炉本体及び冷却系統施設等の主要な設備、機器類は全て新設されました。
JRR-3は熱出力20MW、軽水減速冷却、重水反射体を用いたプール型研究用原子炉であり、原子炉建家1階中央に鍵穴型プールを設け、直径約4.5m深さ約8.5mの円形部に原子炉を設置した。炉心はドーナツ状の重水タンクの中央部に標準燃料26体、
JRR-3炉心図
フォロワー燃料付き制御棒6体、照射筒5基、ベリリウム反射体等で構成しています。これらは格子板上に配列し、その荷重を格子板支持胴を介して原子炉プール底部で支持する構造となっています。炉心の大きさは直径約0.6m、
高さ約0.75mで約1.6mの炉心構造体の上にあり、炉室1階のビーム実験装置のビーム取り出し口に炉心中心部が概ね一致するように設置しています。また、炉心を取り囲む重水タンクには約3.4m
3の重水を充填しており、その大きさは内径0.6m、外形2m、高さ1.6m であり反射体の
役目を果たすとともに高速中性子を減速させ、最大の熱中性子を利用できる場を提供しています。この特徴を生かして重水タンク内には垂直、水平方向からそれぞれ9本ずつの垂直実験孔、水平実験孔が設けられています。
炉心部の垂直照射孔としては、炉心部中央に1本(VT-1)、燃料領域に
JRR-3チェレンコフ光
4本(RG-1 ~ 4)、ベリリウム反射体領域に4本(BR-1 ~ 4)の合計9本が設置されています。
重水タンク領域にはHR-1、2、PN-1、2、3、SI、DR、SH、CNSの合計9本垂直実験孔が設置されており、CNSを除いて8本が照射設備に使用されています。水平実験孔は炉心に対して接線方向に配置してあり、炉心からの直接のγ線が少なく熱中性子の比率の高い中性子ビームの取り出しを可能にしています。
また、この水平実験孔の一つに冷中性子源装置を設けてあるが、これは重水タンクの中の垂直実験孔(CNS)
に減速材容器を挿入し、液体水素を通過させたビームを取り出しています。このビームは中性子導管を通して実験利用棟へ導き、多数の実験装置に冷中性子を提供しています。
炉心の燃料は20%濃縮ウランを用いたウランシリコンアルミニウム分散型合金燃料を使用しています。
原子炉の出力を調整する制御棒は炉心下部から駆動される可動コイル方式の構造で吸収材としてハフニウムを用いています。この吸収材にはフォロワー型の燃料が装着してあり制御棒の引抜きによる中性子束の低下を防止しています。駆動機構を炉心下部に設置したことにより
炉心上部のアクセス性を良くし、照射物のハンドリングを容易にしています。